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ざわわ その2
 この日は一日草刈の仕事でした。

 明浜町は全体が南に面して東西に伸びていますが、リアス式海岸の入り組んだ地形のため、もちろん日の当たる時間帯や日照時間が場所によって異なります。草刈や肥料・堆肥撒きは重労働なので、特にこの季節は強い日差しを避けて、農地によって影に入り込む時間帯を選んで取り掛かることが大切です。
 とはいえ一日中日の当たるところもありますし、足場の悪いところもあり、いろいろ大変です。

 午後は東を向いた斜面に築かれた段々畑で、3時頃から影になる農地を選びました。ですがここは、段の幅が狭いわりには樹が大きくて、いちいち体勢を変えなければならないのがつらいところ。体力と根性の足りない僕は、目安にしている一日の作業時間までのあと30分を持ちこたえられずに、たまらず草刈機のエンジンを止めて、刈ったばかりの土の上に背を落としました。かなり大きな声が、ため息のようにこぼれました。
 何か考えているのかいないのか、ずっしりした草刈機を握り締めていた手の痛みを感じているのかいないのか、はたまた昔のことなどを不意に思い出しているのか、よく分かりませんが、またため息をついて上を向いていると、磯から潮が聴こえてきました。汗びっしゃんこの体に、この音が、涼しい。

 こんなことで一気に気持ちを盛り返し、あと数回この音を聞いてから、作業を再開しました。いつ終わることやら分かりませんでしたが、一段刈り上げるとすぐそこまで、一緒に仕事をしていたフィリピン研修生のK君が上ってきていました。
 寝転がったとき、そういえば草刈機の音が聴こえてこなかったから、彼もきっと僕と同じように休んでいたに違いない。ひょっとしたら同じように気を持ち直したのでしょうか。昔の人だって。
 自然に近い、もう何百年も前に築かれたこの石垣の上での農業と、これにグループで関わっていくということには、こんな楽しさもあるものです。



(ゆ)
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